息する ・ NPO法人気功協会ホームページ「気功のひろば」

息する

子宮から左回りに旋回しながら狭い産道をスルリと抜け出ると、
広がった肺に空気がワッと入ってくる。
呼吸のはじまりは命のはじまりです。
そして、呼吸が止まることを文字どおり息を引き取るといいます。
また、言葉の響きから判るように、日本人は息することを生きることと同義にとらえていたのでしょう。しかし、息することはあまりにも自然なことなので普段は忘れていることの方が多いですね。

赤ちゃんの呼吸

すやすやと寝入った赤ちゃんのお腹に手をあててみると、その呼吸の力強さに圧倒されます。
その呼吸に同調するようにしてこちらも息をしていると、
内側に生命の息吹のようなものがふつふつと沸き起こる感じがあります。
まさに気が満ちてくる感じです。
その赤ちゃんの呼吸は、息を吸うと自然にお腹がふくらみ、息を吐けばお腹がへこむ、
いわば順腹式呼吸です。
初心者が順腹式呼吸から始めるのは自然の順の動きですから理に適っています。
さらによく観察すると、呼吸しているのはお腹だけではなく、
全身のどんな場所もやわらかな呼吸をしています。
呼吸は単に息の出入りだけではなく、体全体の自然の緩急のリズムを作っています。
ゆるんでいる部分は自然に呼吸しています。
だから、呼吸を整えることで心身が整うのです。
「自然」ということが呼吸でも最も大切なことです。
自然の息とは、いわば充実した赤ちゃんの呼吸。
それは何のこだわりも不安もなく、ただ生きていることに全力投球している呼吸。
とらわれなく私が私である呼吸と言ってもいいでしょう。
あるがままの自分に戻れば、自然なままの呼吸が戻ってきます。
逆に、自然の息を取り戻せば、赤ちゃんのような気で満たされたからだ、
先天の身体に戻っていくことができます。

日常の呼吸

私たちは無意識に様々な呼吸法を便利に活用して生活しています。
例えば、「あくび」。これは、からだのゆるみを促進する呼吸ですね。
顎関節を大きく開きますから、心も開放され、ホッとでき、頭がよくゆるみます。
「ためいき」というのも息をおろしてふさいだ心から立ち直るための呼吸ですから、
出る時は自然にため息をついた方がいいでしょう。
「笑い」もまた素晴らしい呼吸法です。
お腹が大きく振動して、息を連続して最後まで吐き続ける。
とても楽しい全身運動で、一遍に全身に汗をかきます。
笑いには固定した状態を一気に打ち破り転換してしまう力があります。
おしゃべりも呼吸法の一種ですが、自分が喋っていて発散感のあるときは、
相手はそれを受けていてくれる場合が多いですから、マナーと節度が必要ですね。
思考が狭い枠の中でぐるぐる回り出してたら、ボケと突っ込み、笑いで解消するのが関西風。  
その点、意味のわからない呪文などは思考と切り離して使えるので便利です。
お経なども毎日定期的に行う呼吸法だと言えるでしょう。
怒鳴ったり、叫んだりするのは、エネルギーが行き場を失い閉じ込められている場合の、
緊急弁のようなものですから、無理にこらえず、他人の迷惑にならないように発散してください。
不要なエネルギーの排泄には禅密功の獅子吼もおすすめです。
ともかく言葉を発する中には何かが発散され、心身共に変化していく特別の身体感覚があります。
体育の時間によくやった、深呼吸はどうでしょうか。
ラジオ体操などを真面 目にやってみるとわかりますが、
一般的な深呼吸は息を大きく吸い込むことに主体があります。
意識を覚醒していくにはこれでいいかもしれませんが、
身体をゆるめるという意味ではもう少し工夫が必要ですね。

呼吸で気をつけること

呼吸法や観想法、そして身体技法を行っていくためのベースはからだのゆるみですから、
逆にこわばるようなことをしていたのでは何をしているのか判らないばかりか、
反って身体を壊すこともあることは知っておいて良いでしょう。
ゆるみが不足したまま不自然な練功を続けて身体を壊すことを、
中国語では、おだやかに「偏差」と言っていますが、
意図的に習慣化してしまった心身の枷は思ったよりはずすことが難しいものです。
呼吸法のように心身にストレートに響くものは、なおさらその影響が大きいので、
無理な呼吸法を習慣化しないように気をつけて下さい。
まずゆるみからスタートすることと、自然な気功と不自然な気功を見分ける目は常に必要です。

昇降呼吸と開合呼吸

では、呼吸の練習を少しやってみましょう。
目的は動作と呼吸の無意識の一致。
全身の運動と呼吸との自然な連動を作っていくことです。
吸う吐くをあまり厳格にせず、気付くと自然にそんな呼吸になっているというのが理想です。
気張らず、楽々とやってみましょう。
楽に自然に立った姿勢から、ゆっくり両腕が広がり、肩の高さまで上がってきます。
続いて肩肘が落ち、同時に腰と膝がゆるみ、ゆっくり腕が下りてきます。
呼吸はどうなっているかを確かめながら、何度か繰り返し昇降します。
今度は開合です。手を胸の高さ正面に上げて、肩肘をゆるめたまま左右にゆっくり広がっていき、
ゆっくり閉じていきます。呼吸の感じは昇降と同じですね。
自然呼吸は、ただ適当に息をしているのではなく、身体の自然のリズム、
自然の緩急の動きにぴったりと呼吸が合っているということで、実に奥が深い呼吸です。
吸う中に集中があり、吐く中にゆるみがあり、
その自然のリズムの狭間に無限の変化が秘められている。
技術に終始すればその技術の範囲を出ないが、自然に帰れば、無限の宇宙とつながり出す。
そこに息することの醍醐味も、気功の本質もあるのです。

気功生活Vol.14 より 転載