手のひらの宇宙 ・ NPO法人気功協会ホームページ「気功のひろば」

手のひらの宇宙  

頭のチャンネル

気功をする時に一番邪魔になるのが、日常的な頭の働きです。
先入観と言いますが、ふと、頭に入ってしまったものは、暗示のようなもので、
意識ではさがせないし、みつかっても意志の力では取り除くことができません。
しかし、その思い込みこそが、心を縛り、体を縛り、あらゆる不自由をつくり出している張本人です。
テロの構図やテロに対する正義の制裁も社会的規模での思い込みですね。
みんな善意の塊で見境のない暴力に走る。
人の心は正義とか神聖なものとかに弱いのです。
私たちもそうした甘い罠にはいつも気をつけておかなければなりません。
自由になるための気功が不自由になるための気功になっていることは意外に多いのです。  

「からだが弱くて」と口癖の様に繰り返せば、
弱いという暗示をコンクリートで塗り固めているようなものです。
また「強くなりたい」というのも、弱いということを肯定する暗示です。
だからあたまを働かせて対処しようとするとかえって難しい。
ところが、恐い番組を見ていても、チャンネルを変えるとお笑いだったりしますね。
頭の中もそのチャンネルを変えてしまえばよいわけです。
そこで、ふだんの意識を転換するための身体技法が必要になってくるのです。
チャンネルを変えるには潜在意識レベルまで降りていかなければなりません。
潜在意識は身体意識と言いかえてもいい。
ですから、日常の意識を超えるには、日常と違った質の動きをします。
気功の連綿とした動作はまさにそれです。そのコツは頭を働かせず感覚を働かせることです。
では、日常の意識とはどんな意識でしょうか。
簡単に言えばあるものとあるものとをはっきり区別 しようとする働きです。

ここに重さの違う二つのボールがあるとします。
両手にボールを持ってみれば確かに重さが違う。
その違いに注目してしまえば日常的な意識が強く働きます。
腕の緊張はどうですか。
何でもいいですから一度両手に違う重さのものを持って試してみて下さい。
比べようという意識の時はけっこう緊張感がありますね。
今度はそのまま両手の重さが同じになるように手の位置や高さをかえてみます。
ひとつになった感じがありますか。
腕の緊張感はどうですか。意識の状態はどうですか。
簡単な実験ですが、気功の本質がこの中に隠されています。
重さがひとつになった時になんかボーッとしませんでしたか。
もう一度ていねいに較べて下さい。
この感覚、「入静」と似ていませんか。  
識別的な頭の働きが消えると心が静かな境地に入る。
その入り口はからだの感覚の変化、運動の質の変化にあるのです。
ポイントはひとつになった感じ。つながりあった感じです。  
バラバラの動きに美しさはありません。
美しいと感じる動きには、自然のまとまりがあります。
気功はそうした自然のまとまりのある動きでできています。
全身がひとつの有機体として響きあいながら動いている感じです。
では、そうした自然の美しさを身につけるための手法にはどのようなものがあるでしょうか。
まず手始めに、手のひらから始めてみましょう。

手のひらから

全体のつながりを回復するためには、まず部分に集中します。
全体をみようとすると注意が分散し、気が集まらないのです。
もちろん自然のつながりが回復してくれば、注意の移動と分散も自在ですから、
全体をひとつと感じながら、何ケ所もの局部の動きに注目できます。
はじめから完璧を期してはいけません。
どんなに上手な人でも一歩一歩感覚の世界を広げながら歩み続けているのです。
必要なのはほんの少しの発見や驚きを楽しみとできる、心の角度です。

手のひらで開合をします。
中心からひろがっていくのが開。中心へ集まってくるのが合。
動きが途切れないようにゆっくり開と合をくりかえします。
力を入れずに手のひらを開いたり閉じたりすればいいわけです。
いつどこでもできます。寝床に入ってやるとよく眠れます。
運転中はやめてくださいね。念のため。
力が抜けないときは、パッと指を開いて、それからフッとゆるめ、
パラパラと楽にゆすっておきます。手のひらをお湯につけて温めるのもお勧めです。
無駄な力を入れないためには、全身のどの場所でも適度にゆるんでいることが必要です。
その準備をしておくと、気功の味わいはより深いものになります。
そして、味わいが深まれば、さらにからだがゆるむ。ゆるめば、引き締まる力も出てくる。
気功が目指すのは変幻自在な弾力のあるからだです。
ゆるみっぱなしで力が湧いてこないのは、ゆるんだとは言わず、たるんだと言います。
やりすぎはたるみを生じますのでご注意を。

もう一度手のひらに戻りましょう。ゆっくり開いて… 。ゆっくり閉じて… 。
ゆるめて、なめらかに、途切れなく。だんだんに開と合の区別もなくなってきて
、異次元にタイムスリップしたかのような心地よさ。
手のひらが開合すれば、全身のあらゆる部分が開合する。
細胞のひとつひとつまでもが開合しているかのように。そう、開と合は自然の呼吸のリズム。
自然な体ならどの部分にも呼吸があり、開合がある。
そして開でもなく合でもない、その緩急のはざまに、気功の醍醐味があり、自然との一体感があり、
人天合一といわれるすべてと溶け合ったかのような境地が見えかくれしているのです。
求め過ぎない、しかし一歩一歩の進退を楽しむ心をいつもそばに置いて、
手のひらの宇宙、旅してみましょう。

気功生活Vol.8 より 転載